本大学の教育課程では3学部共通で、科目区分「建学の精神」として「創立者の精神を学ぶⅠ」「創立者の精神を学ぶⅡ」(いずれも必修科目)を、また、人間幸福学部には科目区分「自由科目」として「幸福の科学経典学A」、「幸福の科学経典学B」、「幸福の科学経典学C」、「幸福の科学実践教学」、「説法・修法実習」を設定しているが、これらの科目の内容と創立者である大川隆法氏の著作が深く関連していることが示された。例えば、必修科目である「創立者の精神を学ぶⅠ」は、幸福の科学大学の創立者として、「建学の精神」を主導し、精神的な主柱、精神的指導者に位置づけられている大川隆法氏の著作である「幸福の科学大学創立者の精神を学ぶⅠ(概論)-宗教的精神に基づく学問とは何か-」をベースにしており、大川隆法氏の著作が、本学の教育において重要な位置づけを占め、その根底となっていることが明らかとなった。 これらの著作物では、大川隆法氏の基本的な思想を証明するためにいわゆる「霊言(霊言集)」を科学的根拠として取り扱う旨の記述がなされている。例えば、「幸福の科学大学創立者の精神を学ぶⅠ(概論)-宗教的精神に基づく学問とは何か-」には、「(前略)死体になった場合には、食物を与えても、水を与えても動きません。点滴を打っても動きません。これを、『脳の機能が停止した』とだけ考えるのが、現代医学の流れではあるわけですが、そうではないことを証明するために、私は、ここ五年ほどで、二百七十冊以上もの『霊言集』を刊行しています。」、「『人間として脳がなかったら、何も考えられない』と、医学的には思われているのです。しかし、実際は、『焼かれて何もなくなっても、死んだあとの人には個性というものが残っていて、考える力がある』ということを証明するのが、一連の『霊言集』の機能であるわけです。」、「これは、ある意味での『科学的証明』をしていると思っています。」と書かれている。また、「創立者の精神を学ぶⅡ」、「幸福の科学経典学A」、「幸福の科学経典学B」、「幸福の科学経典学C」、「幸福の科学実践教学」、「説法・修法実習」についても、関連著作の中に同様の記述が見られる。 「霊言(霊言集)」については、新聞に全面広告として掲載されたという事実により「妄想や虚言、詐欺などと思われないだけの社会的信用がある」としているが、新聞広告にそのような機能はなく、また、一方的に多くの「霊言(霊言集)」を刊行することだけでは、「霊言(霊言集)」の科学的合理性を証明する根拠とは認められない。 「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用能力を展開させること」(学校教育法第83条第1項)を目的とする必要があり、その上で、憲法第23条が保障する「学問の自由」に基づき「教授の自由」が保障されている。この場合の「学問」とは、一定の理論に基づいて体系化された知識と方法であり、一般化・普遍化されたものであることが求められる。上記の「霊言(霊言集)」については、科学的根拠を持って一般化・普遍化されているとはいえず、学問の要件を満たしているとは認められない。 また、大学は、「体系的に教育課程を編成」(大学設置基準第19条第1項)し、「専門の学芸を教授」(同条第2項)するもので、「霊言(霊言集)」は大川隆法氏のみが行えるとされており、実証可能性や反証可能性を有しているか否かという点でも疑義があるため、このような{「霊言(霊言集)」を根拠とした教育内容を体系的に学生に教授することが可能とは認められない。 以上のことから、このような科学的合理性が立証できていない「霊言(霊言集)」を本大学における教育の根底に据えるということは、学校教育法第83条第1項の「学術の中心」としての大学の目的を達成できるものとは認められない。また、大学設置基準第19条第1項の「体系的に教育課程を編成する」及び同条第2項の「専門の学芸を教授し、幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養するよう適切に配慮」の各要件を満たしているものとは認められない。 なお、念のため付言すると、本指摘は、宗教活動における「霊言(霊言集)」の意味や妥当性に言及しているものではなく、あくまで学問的な見地からの指摘である。 |
大学設置・学校法人審議会大学設置分科会は、「幸福の科学大学(仮称)」の設置認可申請について審査を行ってきた。 大学設置・学校法人審議会における審査は、大学の設置認可の適否を判断するための作業であり、公正さが厳しく求められている。そのため、審査は、大学の設置等の認可の申請及び届出に係る手続等に関する規則(平成18年文部科学省令第12号)に基づき申請者から提出された認可申請書をもとに、「書面、面接又は実地により行う」(大学設置分科会審査運営内規(平成18年大学設置・学校法人審議会大学設置分科会決定)第3条第4項)とされ、審査すべき情報や審査方法が申請者により異なるということが排除されている。また、審査過程においては、審議会からの一方向の審査ではなく、申請者に意見・質問を伝え、適切な対応を求めるというプロセス(補正申請)も取り入れられている。 しかしながら、「幸福の科学大学(仮称)」については、審査途中において、創立者の大川隆法氏を著者とする大学新設に関連する書籍が数多く出版され、申請者も属する幸福の科学グループから本審議会の委員に送付されたり、今回の大学設置認可に関係すると思われる人物の守護霊本が複数出版されたりするなど、通常の審査プロセスを無視して、認可の強要を意図すると思われるような不適切な行為が行われたことは、極めて遺憾である。 本審議会としては、学校法人幸福の科学学園による上記の行為は、大学設置認可制度の根幹を揺るがすおそれのある問題であると考えており、大学設置認可に係る公正な審査を期すためにも、文部科学大臣に上記事項を報告するものである。 以上 |