特集ワイド:日本よ!悲しみを越えて 評論家・柄谷行人さん
<この国はどこへ行こうとしているのか>
◇デモでノーと言おう--柄谷行人さん(70)
その柄谷さんが今、ことあるごとに強調しているのが「デモの重要性」だ。単に参加を呼びかけているのではない。自ら一人の市民として、反原発デモに繰り返し足を運ぶ。国内でデモ隊の列に連なったのは60年安保以来、約50年ぶりのことという。
「逆です。議会制民主主義、つまり代議制のもとで有権者として投票しているだけではだめなんです」。脱原発デモの中に身を置き、思い起こしていたのは哲学者、故・久野収さんの「デモのような直接行動がなければ、民主主義は死んでしまう」という言葉だった。
「代議制は放っておくと寡頭制になる。今の自民党だって民主党だって世襲じゃないですか。世論調査もテレビの視聴率と変わらない。みんなが気に入るようなことをちょっと言えば上がる。マーケットリサーチみたいなもので、これを民主主義と呼ぶのは間違いだ。要するに消費者がやっていることであって、お客さん民主主義。投票だけするのも同じことです」
「資本=国家」は自らの生き残りのため、個人の意思を超えて生き物のように動く。戦争にも原発にも経済合理性はないが、それでも止められない。そして、戦争では軍需産業が、原発では電力など関連業界がもうかる--と柄谷さんは説く。「だから、僕らはそれに抵抗する。資本、国家の論理に巻き込まれないために、市民はただ『ノー』と言い続けることが必要なんです」
最終更新:2012年12月10日 19:12