638 名前:地震雷火事名無し(千葉県)[] 投稿日:2011/08/01(月) 22:59:43.03 ID:yAFU3vG60 [3/7]
こんなものが見つかりましたので、もう故人ですけど、一応言論人だったわけですから掲げておきます。
核燃料サイクルは不可欠な電力資源――妨害こそコストの浪費である 上坂冬子
日本の論点:2005年版
◆絶妙のタイミングでまかれた怪文書
ことのおこりは二〇〇四年(平成一六年)五月にばらまかれた怪文書であった。
表紙に「一九兆円」と大きく書かれた一見アジビラ風のレイアウトによる二六枚の資料は、たちまち複数のコピーとなって原子力関係者の手に渡った。
内容は、国策としての核燃料サイクルをこのまま続けていくと、一九兆円もの多額の予算を投じなければならず、コストが引き合わないから見直すべきだという主旨である。
核燃料サイクルというのは原子力発電所で燃やしたあとの燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、取り出したプルトニウムを新型燃料として活かそうというものだ。
プルトニウムを燃料として利用することは、すでに一九五五年に制定した原子力基本法にうたってある。怪文書はいわば四九年前にかかげた日本の国策に楯つくものであったから
原子力関係者たちは騒然となった。
そもそも怪文書は、まかれたタイミングが“見事”だったというほかない。五年ごとに行われる原子力長期計画(*1)の見直しの時期にあたっていたばかりか、
青森県六ヶ所村の日本原燃(株)で、設立一二年目の成果として、いままさにウランによる核燃料サイクル(*2)のためのプリ・テストが行われる矢先だったのだ。
核燃料サイクルはリサイクル時代の昨今、ウラン資源の再利用という意味でも期待がこめられるようになっていたところである。
これまでは原子力発電所で使い終わった燃料を、フランスやイギリスに持ち込んで処理を依頼してきたが、今後、六ヶ所村で処理して燃料として再利用すれば
電力資源の見通しは大幅に明るくなる。従来、ウランは燃料として三パーセントしか使えなかったのが、プルトニウムを取り出して再利用することによって
九五パーセントまで燃やすことができるからだ。いわば核燃料サイクルはエネルギー資源確保のための画期的な方法といっても過言ではなかろう。
電力はいまや消費生活のみならず、社会構造上のライフサイクルを握っているから、核燃料サイクルが軌道にのれば半永久的に現状の生活レベルは確保できることになる。
639 名前:地震雷火事名無し(千葉県)[] 投稿日:2011/08/01(月) 23:00:13.64 ID:yAFU3vG60 [4/7]
◆「一九兆円もかかる」という数字のトリック
それがいきなり一九兆円かかるから止めろといわんばかりの怪文書によって混乱させられたのだから、電力業界はうろたえざるを得ない。
折しも関西電力では三年後にプルトニウムを使った新型燃料(プルサーマル)を本格的に燃やすべく準備を整えていた矢先でもあり、
いよいよという段階になって頭から否定してかかったこの怪文書に、さぞ辟易したであろう。だが「週刊朝日」(二〇〇四年五月二一日号)では、
さっそく“上質な怪文書”として、これを天下に公表している。
もっとも、日本の民主主義は上質な意見を「怪文書」で主張しなければならぬほどすたれてはいない。当初は衝撃を受けた原子力業界も落ちつきを取り戻すと、
降って湧いたような怪文書に対してさまざまな批判や憶測がなされるようになった。それなりの調査も行われている。その結果、怪文書の筆者は監督官庁の経済産業省の
課長補佐だといって氏名までが取り沙汰されたばかりか、上司が部下に書かせたなどという噂もとびかった。要するに、国策としての核燃料サイクルに楯ついたのは、
特定の人の下心あるいは意図があってのことだというのだが、憶測や噂はさておくとしても、一九兆円の無駄をあげつらった「怪文書」にはトリックがある。
分母が抜けている(*3)のだ。一九兆円というのは今後八〇年間の経費の総計である。国の試算によれば、これが電力料金に上乗せされたとしても一世帯あたりの負担は
月額一〇〇円ほどであろうという。
そもそも何を以てコスト高と決めつけるのか。繰り返しになるが、現状の生活レベルを保つために、個人にとっても社会にとっても国家にとっても
電力は不可欠の要素であり、このライフラインを維持するためには、コストを二の次にしても電力資源対策を考えねばなるまい。
そもそも核燃料サイクルを考えるにあたって、国家としては当然コスト計算をしてかかったはずである。さきごろ古いコスト計算資料が監督官庁から出てきたといって、
まるで秘匿していたかのように取り沙汰されたりしたが、あれは傍らでみていて噴飯ものだったとしかいいようがない。当初の試算など貨幣価値も変わったいま
秘匿する意味などないだろうし、それに原子力発電所で燃やした燃料の安全を確保して直接処分するのと、再利用のためのプルトニウムを取り出して新型燃料を
作り上げるのとを比較すれば、後者の方が高くつくことは論じるまでもなく常識で判断できる。コスト高を承知の上でコストがかかってもやらねばならぬことがある場合、
それを決断するのが国策というものだ。
640 名前:地震雷火事名無し(千葉県)[] 投稿日:2011/08/01(月) 23:00:49.83 ID:yAFU3vG60 [5/7]
◆延期すればさらにコストは膨らむ
先日、久しぶりに六ヶ所村を訪ねた。すでにウランの濃縮からはじまって、原子力発電所で使用済の燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、
新型燃料として半永久的に活かすまでの核燃料サイクルの工程はほぼ完結の段階に近づいていた(リサイクルは何度も繰り返すことができる)。
原子力に関して自国内でこの種の施設をもつのは、世界広しといえどもフランスとイギリスと日本以外にないだろう。未来エネルギーとして注目されている
イーター(核融合)についても日本は世界各国に先駆けて意欲的で、六ヶ所村にはイーター予定地の立札もすでに設置されていた。
ともあれ、六ヶ所村で予定されていたウランを使っての核燃料サイクルのプリ・テストは、怪文書をきっかけにコンセンサスが乱れたため、
九月の予定が一〇月まで持ち越されたとか、いや冬になっても始まらないだろうなどといわれて変更を余儀なくされる結果となった。
もし本気でコストを問題にするなら、コスト論者としては、こうしてプリ・テストを待たされていた間にも無為なコストが積算されていることを考えねばなるまい。
また、核燃料サイクルの中止をとなえる以上、六ヶ所村を元のサラ地にする費用なども考慮すべきで、そうなると当然のことだが直接処分のほうが再処理よりも
高くつくことになり、これもすでに原子力委員会の新計画策定会議で報告された(二〇〇四年一〇月七日)。
◆日本では原子炉の事故は一度もない
日本の原子力発電所では、原子炉にかかわる事故をこれまで一度もおこしていない。五年前、東海村のJCOで被曝した二人の死者が出たが、
あれは原子力発電所の施設と関係ない、ウランを扱う中小企業がおこした事故だ。さきごろ関西電力美浜発電所で五人の死者を出したが、
これも原子炉とは別の建物の中でおきた事故である。普段、建物の中は無人だが、たまたま定期検査が近づいたため作業員が工具を運び入れた時に、
偶然の不運によって蒸気管が破裂したのである。予測不可能な事故ではなかったが、状況として交通事故にも匹敵するものであった。
原子力発電所に特有の事故ではない証拠に、その後、火力発電所で同じような配管の老朽化(*5)の見落としがあったと報じられた。
原子力の本質にかかわる問題ならともかく、周辺の問題で停滞を余儀なくされた例は少なくない。“もんじゅ”の事象
(これも国際基準では事故以前の事象である)も、すでに国と県の審査にパスして安全が保証されたにもかかわらず、ほぼ九年間停止したままだ。
さらにいま「一九兆円」のコストをこけおどしに高々とかかげて、核燃料サイクルの国策に待ったをかけられたことになるが、
停止によるコストのロスを当事者たちは計算しているのだろうか。さらに加えるなら、もし怪文書が監督官庁から意図的に出されたものだとすると、
公務員の規律違反として咎められるべきだということも見逃してはならない。
いずれにせよ、二兆余円を投じてここまでこぎ着けた六ヶ所村の核燃料サイクル施設が、いよいよ本格的に始動するときになって、
すでに検討を終えたはずのコストなどを理由に反対を叫ぶ動きが日本の原子力の国策を混乱させている。私にはこれらの動きが日本の将来を
憂えているとは思われず、新手の反原発および反体制運動にしかみえない。つまり反対のための反対を主旨とし、国家の進路妨害を狙うものとしか考えられないのである。
642 名前:地震雷火事名無し(東京都)[] 投稿日:2011/08/01(月) 23:03:02.68 ID:2Mc8Ki0A0 [2/4]
638
どうりで静かだと思ったら、あいつもう死んでたのか
643 名前:地震雷火事名無し(千葉県)[] 投稿日:2011/08/01(月) 23:05:06.26 ID:yAFU3vG60 [6/7]
【脚注】
1) 原子力長期計画 正式名称は「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」。原子力委員会では一九五六年以来、
これまで九回にわたって計画を策定してきた。現行の原子力長期計画は二〇〇〇年一一月に策定されたもので、現在、一〇回目の
策定に向けた取り組みが行われている。使用済み核燃料の処理方法だけでなく、実用化が大幅に遅れている高速増殖炉をどのように位置づけるかなども大きな論点になる
2) ウランによる核燃料サイクル 現在の核燃料サイクルの主流はウラン・サイクルで、日本はこの分野で最先端を走っている。ずっと未来のことを考えると、
ウランの埋蔵量の三~四倍はあるといわれるトリウムを使ったトリウム・サイクルの優位性を主張する考えもある。
3) 分母が抜けている 怪文書とは別に、電気事業連合会は全国五二基の原発から出る使用済み核燃料を青森県六ヶ所村の再処理工場で
四〇年間再処理することを仮定した後処理費用を一八兆八千億円と算出している。しかし、これには三〇年かけて工場を閉鎖する費用も含まれており、
この場合の分母は七〇年になる。また、二〇〇四年一〇月に発表された原子力委員会の試算は対象期間を二〇〇二年から二〇六〇年と、
経済産業省などの四〇年より拡大している。
(なぜか註4がない・・・引用者)
5) 火力発電所でも配管の老朽化 美浜原発3号機の一一人死傷事故を受けて、原子力安全・保安院は全国の火力発電所の調査を指示。
北海道、関西、中国、沖縄の電力四社の七発電所・九基・合計二六カ所で配管の肉厚が国の基準を下回っていることが判明した。
793 名前:地震雷火事名無し(関東・甲信越)[] 投稿日:2011/10/16(日) 23:35:48.00 ID:rntR+Y2iO
939:無名草子さん :2011/10/16(日) 23:32:37.87
上坂冬子「反対派と真っ向から衝突することをせず、目立たぬように計画を進めて、
いつの間にか“世界のロッカショ”を実現していた日本の原子力関係者をいとおしく、誇りに思う。」
「六ヶ所村の安全対策は少し神経質過ぎる。これは日本技術の唯一の欠点なのではないか。
アジア諸国の原子力施設を見学してきた後では、そう思う。」
797 名前:地震雷火事名無し(関東・甲信越)[sage] 投稿日:2011/10/17(月) 00:00:59.52 ID:fiqB9He5O
上坂冬子の原発好きは有名ですぞ。
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最終更新:2012年12月26日 13:30