「ちょっと、かな配列」の記事、配列の評価基準に関連して、月見草での評価関数について少し解説を致します。

「月見草」では「打鍵四連接」、具体的には「最近の打鍵三つ」を考慮した「今からの打鍵負荷」を唯一の評価基準としています。「花」のように「トータルでの指の負担の平均化」は、計算することも考えましたけれど、結局のところ全く計算していません。そんなことをしなくても、それなりに平均化されますので問題ないと評価したということが一つの理由です。もう一つの理由は同じ指を短期間に集中して使うことが問題で、それは四連接までの評価ならば、かなり避けることになるのでそれで十分、というよりも短期間でのばらつきは総計評価より少なくなる。トータルでの頻度を考慮しても、どのみち文章の傾向でかなり差が出てしまうので、例えば「一日の総打鍵」の中でのバランスはとれない。そのようなことのために他の性能を犠牲にするのはかえって良くないのではないかということです。ただ、キーごとの打ちやすさを考慮して、単純な二連接よりやや差をつけて評価していますので、薬指はやや少なく、小指はかなり少なく使うようになっています。

基本的なデータとしては「打鍵二連接の評価値」を用いています。これは「速さ」に近いですけれど若干の違いがあります。まず、早く打てるとしても楽でない連接があると考えて、その評価値を悪くしてあります。具体的には「小指というものは結構器用で速く動くけれどひ弱ですぐに疲れる」ということです。また、速く打つと多少無理があるという評価を下した連接、例えば、「KO」はそれほど悪くないけれど、「WD」はちょっと悪いとか、「KU、LU」という連接もあまり良くない、「IN」とかの方がマシとかいうことです。以下のこの項での説明では「ms」と表記していますが、あくまでイメージしやすくするためです。
また、二連接では、さほど「交互打鍵」に拘ってはいません。具体的には「SK50ms」「KS55ms」「KL60ms」「SD65ms」とかいった具合です。
それから、二連接評価では、悪い運指をやや極端に悪く評価しています。例えば「KK」という連打…、それほど嫌うこともないのかもしれませんが、負荷の評価としては「150ms」としています。「KSDL」で170msですから悪すぎるかも知れません…。(ただしこれは、「K」の前の打鍵に問題がなく「SD」を滑らかに打てた時の話です。)そうまで低く評価したのは「打ちやすさ、あるいは逆に疲れ」を評価してのことです。

三連接についての評価は二連接の評価を基本に計算されています。ただし、ここで「片手三連打は良くない、特に左手は。」という評価が加えられています。どういうことかといいますと、例えば、「JK」も「KL」も大変打ち良い、速く打てます。しかしながら、「JKL」はあまり良くない…のです。実際、速度を計測するとどうしてもかなり差がつくのです。これはどういう訳かというと、「JK」と素早く連打するときに手首を…若干ですが…使ってしまっていて、その後「L」を打つのは単に「KL」と打つときとはどうも違うという観察結果によるものの様です。このあたりは、「キーボードの物理的特性」「個人の手の力」「構え方」などの要素で随分違うとは思います。
……「ブナ配列」が速いはずだけれど疲れるという感想を述べておられましたが、この辺りが原因ではないでしょうか。
「月見草」では、この件は大きめに評価してあります。その結果として交互打鍵率が高くなり、「JI」に「ぁ」が割り当てられたりしています。多分、ゆっくり打つ分にはもっと頻度の高い仮名に割り当てたほうがよさそうです。その点「月見草」は高速時に合わせてあるということです。今のところ私にも是非はわからないところです。
また、「KK」と打つのと、「KDK」と打つのではやはり後者のほうが時間がかかります。左右の手が独立としたら説明がつかないのですけれど、何度測っても余計に時間がかかります。また、器用な人なら同じ時間で打てるかもしれないけれども、やはり後者の方が疲れるでしょうということで「KK150ms」「KDK170ms」ということになっています。「KDSL」と同じになってしまいますが…。そのような次第で、実は打鍵数もあまり重視しない計算をしています。しかし頻度の高い仮名が二打鍵になると、必然的に悪い運指が増えてしまいますので、結局はかなり少ない打鍵数となりました。
最終更新:2013年02月12日 19:31