- サンプル:ExampleAddFunctionBySKSE.zip(動かし方は中にある readme.txt を参照のこと)
目的
SKSE プラグインによって Papyrus で使える関数を追加する最小サンプルを提供することが目的です。
関数の追加方法を覚えることで、適宜、用途・要求速度などの状況に応じて Papyrus と C/C++ とを組み合わせてスクリプトが書けるようになります。
前提
SKSE64プラグイン開発環境構築手順にて、skse 本体のコンパイルができる状態にあることが前提となります。
プラグインのサンプルプロジェクトである samplePlugin を元に Papyrus 関数を追加するよう書き換えます。
手順概要
まずは作業手順についてですが、以下の手順を踏みます。
- CK を使って追加する関数を Papyrus スクリプトで定義し、psc/pex ファイルを用意する。
- プロジェクトを準備する。
- 追加関数を実装する。
- 追加関数を Papyrus 関数として使えるよう登録する実装を追加する。
- dll をビルドし、配置する。
- skse_loader.exe で Skyrim を起動する。
細かく1つ1つ順を追って説明していきます。
手順詳細
psc/pex ファイルの準備
CK を起動し、メニューから [Gameplay]→[Papyrus Script Manager]を開きます。
開いたら、Papyrus Managerのリスト上で右クリックし、[New...]を選択して新しいスクリプトを作成します。
サンプルプラグインの名前は「Calculator」とします。また、Sum 関数は v1 と v2 の値を足した値を返すこととします。要はよくある計算機の例です。
以下、ソースの事例です。
Scriptname Calculator int Function Sum(int v1, int v2) global native
ポイントは、
- native と書いてあること。
- 関数本体が無いこと。
です。
必要最小限ということで今回は未 extends/global の関数を事例に挙げますが、extends/global 以外の関数も定義可能です。
このソースを保存すると普通にコンパイルでき、pex ファイルが作成されるので「Skyrim\Data\Scripts」フォルダを確認してみて下さい。psc ファイルは「Skyrim\Data\Scripts\Source」フォルダにあります。
プロジェクトの準備
dll ファイル名の変更
samplePlugin プロジェクトを活用しますが、そのままビルドするとできあがるプラグイン dll ファイルが samplePlugin.dll になってしまいます。
独自の名称の dll ファイルを作成するため「ソリューションエクスプローラ」で「samplePlugin」プロジェクトを選択し、F2 キーを押してプロジェクトの名称を変更してください。
ここでは「Calculator」とします。
すると「Calculator.dll」が生成されるようになります。
また、dll作成時に「プロジェクトとライブラリの名前が違う」と警告が出るので、exports.defも編集します。
(編集前)
LIBRARY "samplePlugin" EXPORTS SKSEPlugin_Query SKSEPlugin_Load
(編集後)
LIBRARY "Calculator" EXPORTS SKSEPlugin_Query SKSEPlugin_Load
※ プロジェクトファイル名自体は「samplePlugin.vcproj」のままですが気にしないことにします。
skse プロジェクトの機能を拝借
skse プロジェクトの機能を使うため依存関係を作って、機能を使えるようにします。
以下、手順です。
- 「ソリューションエクスプローラ」で「skse」プロジェクトを右クリックし「プロパティ」を選択する。
- 「構成プロパティ - 全般」タブの「構成の種類」を「スタティック ライブラリ(.lib)」に変更する。
- 「ソリューションエクスプローラ」で「Calculator」プロジェクトを右クリックし「プロジェクト依存関係」を選択する。
- 「skse」プロジェクトにチェックを入れる。
追加関数の実装
以下に追加する Add 関数の例を示します。
// SInt32 や StaticFunctionTag などを使うために必要になる。 #include "skse/PapyrusNativeFunctions.h" // ... 省略 ... SInt32 Sum(StaticFunctionTag* self, SInt32 v1, SInt32 v2) { return v1 + v2; }
Calculator.psc と比較してみてください。ポイントは以下の通りです。
- skse/PapyrusNativeFunctions.h をインクルードしている。
- int には SInt32 を使う。
- 第一引数に self を追加する(global の場合は StaticFunctionTag*)。
- 関数の中身をしっかりと実装する。
Papyrus 関数として使えるよう登録する実装
SKSE プラグインには以下の2つの関数を必ず実装する必要があります。
役割 | シグネチャ |
SKSE プラグインの導入可否判断 | bool SKSEPlugin_Query(const SKSEInterface * skse, PluginInfo * info) |
SKSE プラグインの初期化 | bool SKSEPlugin_Load(const SKSEInterface * skse) |
SKSEPlugin_Load 関数にて追加関数を Papyrus 関数として使えるよう登録します。
重要な部分のみ抜粋します。
bool RegisterScaleform(GFxMovieView * view, GFxValue * root) { VMClassRegistry* registry = (*g_skyrimVM)->GetClassRegistry(); // Calculator.Sum 関数を登録 registry->RegisterFunction( new NativeFunction2<StaticFunctionTag, SInt32, SInt32, SInt32>("Sum", "Calculator", Sum, registry)); return true; } extern "C" { // ... SKSEPlugin_Query 省略 ... bool SKSEPlugin_Load(const SKSEInterface * skse) { _MESSAGE("load"); // register scaleform callbacks // Scaleformコールバックを登録する。登録に成功するとtrueを返す。 // 登録名が既に使用済みの場合は登録失敗になるので、ユニークな名前で登録すること。 g_scaleform->Register("Calculator", RegisterScaleform); return true; }
};
SKSEPlugin_Load は、SKSE によって呼び出されるSKSE プラグインの初期化関数です。ここで RegisterScaleform 関数を登録しています。
RegisterScaleform 関数が Sum 関数を Papyrus 関数として使えるよう登録する実装です。
NativeFunctionX の X は引数の数によって 0 ~ 9 まで使えます。<> の中および引数は以下の通りです。
<> の1番目 | 親クラス。グローバル関数の場合は、親クラスにStaticFunctionTagを指定。 |
<> の2番目 | 戻り値の型。 |
<> の3番目以降 | 引数の型を順番に。 |
引数の1番目 | 関数名 |
引数の2番目 | クラス名 |
引数の3番目 | 関数ポインタ |
引数の4番目 | VMCrassRegistry* |
本サンプルでは1つだけの追加ですが、いくつでも追加できます。
ビルドとできた dll の配置
ビルドすると以下のフォルダに「Calculator.dll」ができあがります。
- skse_X_XX_XX/src/skse/Release
「Calculator.dll」を以下のフォルダにコピーすれば関数の追加は完成です。
- Skyrim/Data/SKSE/Plugins
CK 内の Papyrus スクリプトで Calculator.Sum 関数が使えるようになっています。