ここが変だよ送還直前即興曲

もくじ


六紡均衡

  • レビューより
設定に関してですが、オリジナルの世界感を出そうとしているのはわかるのですが、六紡均衡など、まず設定ありきの考えで説得力がありません。
なぜ各属性同士がいがみあっているのか、均衡が保たれているのか、作品中の解説では(少なくとも私は)納得いくものではありませんでした。
江戸時代のようなイメージで設定されたのかと思われますが、江戸時代は参勤交代で各大名の経済力を削いだり人質を取ったり、様々な幕府の施策で均衡が保たれていたわけで、
そういったリアリティが感じられず、マンガの長期連載作品の妙な後付け設定のようになってしまっています。

世界の広さ

  • レビューより
作中で「徒歩で2、3日で目的地に着く」というセリフがありますが、同時に出された地図を見ると世界の端から端まで一週間もあれば行けてしまうような気が……。
いくらなんでも狭すぎじゃないでしょうか。
時速4kmほどでしょうから、一日大体10時間移動に費やしても40km。大体100kmほどでしょうか?一都六県より狭いぐらいです。
一つの国だけならばともかく、一つの世界でこんな狭いというのはこれまたリアリティが無いのではないでしょうか。
世界ではなく、この国一国の地図である、という風にしておけばさほど不自然ではないかと思いますが、そうすると今度は地図を見る限り地続きになっている他の国はどうなんだという事になりそうです。

魔術について

  • レビューより
非常に強大な力を持つ魔道士ですが、設定上、一部の人間に生まれながらにして与えられる力となっているので、当然隣国も多少なりとも魔力を持った人間が生まれるはずです。
六紡均衡のような危うげなシステムを持つ国ではすぐに攻め入られてしまいそうなのですが……。

世界観

ファンタジーをベースにした物語のため、世界観的にはアルクが異世界の住人である。にも関わらずアルクは「弘法大師」「ナチスドイツ」についての予備知識があるようだ。
この世界はどんな世界なのだろうか?

弘法も筆の誤り

Talk アルク
落ち着いて!
ほら、弘法にも筆の誤りって言うでしょ?!
Talk ユウ
そういう事は弘法並みに手柄を立ててから言え!

弘法大師空海はる真言宗の開祖、文人、書家として評価の高い人物であって「手柄を立てた」わけではない。
「弘法も筆の誤り」というのは「その道の達人でもミスをする」という意味であり、やはり「手柄」とは関係無い。

ナチズム

  • 何度も出ている。
Talk アルク
お願い、ユウ!
ちょっとだけ、ちょっとだけで良いから!
Talk ユウ
祭りの次は、屋台でのケンカをお望みか。
さすが天災。考えることが違う
Talk アルク
うわー!
ケンカするって決めつけてるしー。
偏見はんたーい! ナチ思想はんたーい!

Talk ユウ
いざとなったら
野宿すれば良いんじゃねえのか?
Talk アルク
わたし、野宿はイヤよ
Talk ユウ
お前に反論する権利はない
Talk アルク
ブーブー!: ナチズムはんたーい!
Talk ユウ
たかが、金魚すくいごときでマジギレして
一般人に魔術を振りかざすお前の方が、十分ナチだ

Talk ユウ
……ああ、素晴らしすぎてぐうの音も出ない。
つーか、お前の頭が素晴らしすぎだ
Talk アルク
うわぁ、相変わらずナチねー
そういう偏見も、過ぎると国宝物だわ。
そこまで言うんだったら、問題点を列挙してみなさいよ

ここで用いられているナチズムはいわゆる日本での政治的主張に賛同しない相手へのレッテル貼りに用いられる、ゆがめられたナチズムである。
本来ナチズムは国家社会主義を指し、ざっくりと説明すると「一つの価値観の共有」であると定義され、これを可能にするのは同じ価値観の中で生まれ育った同じ民族である、という一種の選民思想である。
そのためユウもアルクも正しく「ナチ」を理解しておらず、「何となく自分と違う考え方の相手を攻撃したいときの便利な言葉」として使用している。
「歪められたナチ」としては正しいがこの「歪められたナチ」自体が既に間違いなので、やはり誤り。
このあたりの安易なナチ認定に関しては「ゴドウィンの法則」と呼ばれるユニークな学説によって解説されている。

欧米諸国で安易なナチ呼ばわりは大変な侮辱であり、命に関わることすらある。
作中では非常に気軽に使用しているが、日本でこの作品が公開できるのは思想信条の自由が認められているというだけの話。
たいていは参加者やプレイヤーから袋叩きにあって修正ないし削除されるのが関の山。
安易にナチを持ち出したことでジャンルや業界が作家の活動自体を拒絶したケースさえある。

パチキ

Talk アルク
ところでさ;自らの身体を案じてくれてた乙女を
パチキの餌食にして心が痛まない?
正当に謝罪を要求したいんだけど
Talk ユウ
安心しろ、乙女はパチキって言葉の意味を知らん。
よってお前は乙女じゃない。証明終わり

大阪弁のようである。世界観とは何だったのか
※パチキとは頭突きのこと。語源は韓国語(朝鮮語)の「パッチギ」が変じたものと言われている。
意味を知っていたら異世界物語で使うことはない。

エビフライ

Talk ユウ
………:あーっ!
お前はどうして考え込んでるときに限ってちょっかいを…
…待て! お前、それは命ほどではないにしろ
それなりに命はってもいいかなー?
って思うくらいに大好物なエビのフライ様ではないか!
キサマ、それだけは返せ!!
Talk アルク
食事中にボーっとしてるユウが悪い。いっただっきまーす!
~(中略)~
Talk アルク
ちょっ、ちょっ、ちょっとちょっと!
たかがエビ一匹でしょ、どうしてそこまで…あいたっ!
これは「異世界に召喚されたあと、アルクの家での食事」という場面である。
エビは異世界にも生息しており、こちらと同様に「エビ」と呼ばれており(※)、
エビフライという料理は異世界にもあるようだ。
※いわゆる召喚系異世界ファンタジーで「言葉が通じる」場合、名詞も自動翻訳されるものとして突っ込まないお約束があるので、ここについては言い過ぎの可能性もある。
ただし「エビフライ」という調理方法が異世界に「当たり前のように存在する可能性」は高くないため、エビは問題ではなくてもエビフライは問題である。
とはいえ他の作品の異世界でも現実世界と共通の料理などがあるし、大阪弁ほど目くじら立てて指摘する場面でもないかも(後の漫画も同様。逆に大阪弁はフォローのしようが無い)
もし作品の世界観を掘り下げるのであればその世界独自の食文化を描写するのもアリだったのでは。異世界感を出したいのか共有世界感を出したいのか非常にあいまい。

漫画

Talk ロウ
そんなに怒鳴らなくても聞こえています。
そのまま目の前にある木に、突っ込んでください!
Talk ユウ
ぶつかったりしないだろうな?!
Talk ロウ
まさか!;そんな漫画みたいなオチはないですよ!
大丈夫ですから、突っ込んでください!
  • 漫画があり、こちらの世界でのいわゆるお約束も踏襲されているようだ。

とりよせバッグ

Talk ロウ
そうですね…
ユウさん、人間ジャグジーは違いますよ。水だけじゃなくて、お金ももっていますから
とりよせバッグが適当かと思います
  • ドラえもんもいるようだ。ほぼ現実世界と同じ世界観らしい。
  • パロディとなっており硬派な印象は無い。
  • 異世界物語を構築するのであればメタな寒いネタは徹底的に廃していくのが通常。出なければ日常感が強くなってしまい、必然的に異世界感が薄まってしまうからだ。
    宇野シナリオではこうした徹底ができず、必ず物語の芯がブレる。その結果シリアスな場面でコミカルなギャグを差し込むなどして話の腰を折る。これは宇野氏自身が物語を信じていないから起きていると思われる。
最終更新:2019年09月22日 21:22