コマエダ ナギト
「まさかこんな何事もなく終わっちゃうとは…
大仰に始まったわりにこの結末は地味だよね。
もうちょっとこう、生きるか死ぬかみたいな壮大なスペクタクルを期待してたんだけどなぁ。
ボクはこの島で希望を目にするためなら殺しても殺されても構わないと思ってたのに。
それがどうだい?この生温い結末は…
『悪かったな生温い事に付き合わせて。』
「あはは、日向クンはせっかちだなぁ!ちゃんと話は最後まで聞いてくれないと!
ボクはね、こんな事に巻き込まれたのは最高の不運だと思ってたんだ。
だからこそきっと、この島で素晴らしく幸運な出来事が起こるんだろうって!
そして、だからこそ…戸惑ってるんだよ。
果たしてこの結末こそが幸運なのか…それとも更なる不運なのか…
ねぇ、日向クンはどっちだと思う?」
『お前の言うこの温い結末も結局、不運…なのかもな。』
「……………………日向クン、ボクはこの島こそがボクの死に場所じゃないかと思ってたんだ。
おぼろげな希望だけを頼りに不運と幸運を繰り返す人生からやっと解放されるって…
ボクはいつもどこか、手の届く場所、目に見える範囲に希望を探してた。
でも、今は…違う。
この島でキミと過ごした日々が教えてくれた。希望は始めから…このボクの中にもあったんだ。
『なら、それに気付く事ができたのは幸運なんじゃないのか?』
「そう考えるところが素人の甘いところだよ!
だって、自分の中の不確かなものなんてどうやって探せばいいんだい?
それでもボクは知ってしまったんだ。いつでもこの胸に希望があるって…」
『なら、もうそう簡単に死ぬだの殺すだの言えなくなったよな。
自ら希望を消すのはお前の本意じゃないだろ?』
「…ほんと、まったくひどい不運だよ!
だからそろそろ、少しくらい幸運に恵まれてもいいんじゃないかなと思うんだ。
だから…今なら言えるかな、って。」
『言えるって…何をだ?』
「…………………日向クン…
ボクと、友達になってくれるかい?」
『え…?ああ…なんだ。…そんなことで、よかったのか…
もちろん…お安い御用だ。』
差し出された手をしっかりと握る。
今の狛枝となら、いつかちゃんとわかり合える日が来るかもしれない。
この島に来るまで感じた事もない、明るい想いが俺の胸を満たしていた。

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最終更新:2015年10月16日 21:17